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✒️さらば青春
西尾 彩
この前たまたま
朝から運転する機会があったのだが
気分が乗ったので地元の山の展望台まで
そのまま走ることにした。
ドライブスルーで
カフェラテとマフィンを注文し
久しぶりの朝食をとりながら
通勤ラッシュの車をやり過ごしていると
制服を着た自転車の集団が追い越していった。
母校の制服だった。
私の母校は回り道にはなるが
目的の展望台の途中にある。
なんとなくルートを変更し
通学路を行くことにした。
学校が辺鄙なところにあるので、
通学はほぼバスか自転車で
歩きの生徒はほとんどいない。
母校の麓になると
方々から自転車が集まってきた。
それを見た瞬間
冷たい空気を頬に受けながら
自転車を漕いでいた頃が急に蘇ってきた。
ずっと青春らしい青春は
していないと思っていた。
だがあの頃の何でもない日常が
既に青春だったのだと気付かされた。
そして交差点で詰まっている
自転車の群れを見ながら
これをいかに追い越して早く校門を通るか、
考えるもなかなか追い越せず
敢えてその群れのペースに身を委ねる
ということに甘んじた
初めて妥協することを
覚えた瞬間を思い出した。
せっかちなのは当時から
何も変わっていないな、と思いながら
彼らの背中を見送って
私は展望台へ向かった。